今日は、歌舞伎に連れて行っていただきました。初めての歌舞伎鑑賞です。
途中に休憩30分入れるものの、4時間強の舞台でした。約一ヶ月の舞台公演の間、休日無しで毎日昼と夜の2回公演とのことです。ものすごい体力です。

 この5月公演の演目は、海老蔵が10役早変わりでこなすもので、悪人から善人、男から女、太夫から奥方、殿様から家来、武士から坊主、人間から幽霊と様々な役をマジックショー張りの早変わりで(ほとんど10秒かかってないかも。時にはほんとに数秒で観客の目の前で違う役に変わります!)、宙を飛び、舞台から消えてなくなるなど、すごい演目です。

 歌舞伎では時間が押すことは無いそうで、4時からの公演はほぼきっかり4時に幕が空きました。 通常ではあまり行われないらしいのですが、海老蔵の口上による10役と大まかな筋の説明から始まります。全部で何幕あったか覚えていませんが、2時間弱経った時に、30分のインターミッション。その後また、幕が始まって終わったのは8時半前。それまで海老蔵は出ずっぱりです。

 今回初めて歌舞伎を見て感じたのは、まず、海老蔵の最初の口上の時、世間は色々海老蔵のゴシップで勝手に賑わってますが、ほんとにこの人は歌舞伎に対して真面目で真摯に向き合ってるんだなあということが感じられて感動しました。それから、やはりなんと言ってもその様式美。歌舞伎という確固たる様式を守り、海老蔵は勿論のこと、特に脇を固める役者さんたちの一糸乱れぬ、シンクロナイズドスイミングのような動きの美しさ。特に僕がすごいと思ったのは、せりふの長回しの時の太鼓。笛、拍子木などの鳴り物と、役者(特に主役の海老蔵)との息合わせによる絶妙なタイミング。音楽の上にせりふが乗ってくるとか、この場面にはこういう音楽とかじゃないんです。西洋音楽的なリズム、メロディ、ハーモニーに則ってタイミングを合わせる、ではなく歌舞伎の場合は、息を合わせる。鳴り物方と役者との掛け合い。間合い。ほとんどフリージャズです。これはほんとに高度なテクニックが無ければできません。で、それは演目の間すべての瞬間において現れています。勿論主役は海老蔵であり、他に名前のある役者さんたちも多数出ていますが、名前の出てない裏方さん的な役者さん達のレベルの高さ。海老蔵が早変わりするためには、その影武者のような役者さんが必要なわけで、それをこなす為にはその間合いのテクニックが無いとできないわけです。それに、大道具小道具さんなどの裏方さん、鳴り物さんたちも含めすべての人がそれぞれの役割をしっかりとこなし、一人ひとりがお客さんも含めてこの舞台をすばらしいものにしようという思いが伝わってくるものでした。役者をはじめここに関わってるすべての人が芸が血の中に染込んだプロフェッショナルの集団です。4時間という舞台を完璧にするためにかける準備やリハーサルの時間を考えたら、もう素直にすばらしいというしかありません。

 いままで、ほとんど芝居や舞台というものを見たことは無かったのですが、すばらしいものを見せていただいて感謝感謝です。

京都南座
3階席まであります。開園時間にはほぼ満席に
花道